「階段が多くて不安……」
「一人暮らしが心配……」
「持ち家が広すぎて管理が大変……」
こうした理由から住み替えを考える高齢者の方が増えています。
しかし実際に動き出すと、「高齢者だからと賃貸契約を断られた」「資金面に不安がある」といった壁にぶつかることも少なくありません。
こうした高齢者の住み替えを後押しするために、国や自治体、公的機関による様々な支援制度が用意されています。
「住み替えたい気持ちはあるけれど、どこに相談すればいいのか分からない」という声も多く聞かれますが、実際には資金・入居審査・空き家活用といった課題に対して、それぞれ対応する支援制度が存在します。
今回は住み替えを検討している高齢者やそのご家族に向けて、代表的な支援制度、利用する際のポイント、そして住み替えを成功させるための考え方まで、幅広く解説していきます。

高齢者の住み替えでよくある課題
支援制度を理解する前に、なぜ高齢者の住み替えにハードルがあるのかを整理しておきましょう。
◆賃貸契約が難しい
「孤独死のリスク」や「家賃支払い能力への不安」を理由に、単身の高齢者は一般的な賃貸物件の入居審査で不利になりやすい現実があります。
◆資金面の不安
持ち家があっても、まとまった現金がなければ引っ越し費用や新居費用の工面が難しい場合があります。
◆空き家の管理・活用に困る
住み替え後、元の持ち家が空き家になり、その管理や売却・賃貸活用に悩む方も多くいます。特に地方や郊外の一戸建てでは、買い手も借り手も見つかりにくく、固定資産税や維持費だけがかかり続けるケースも珍しくありません。
◆情報が分散していて分かりにくい
支援制度は国、都道府県、市区町村、民間の公的機関など様々な主体が運営しており、どの制度が自分に当てはまるのか調べるだけでも一苦労です。相談先が分からないまま、住み替えそのものを諦めてしまう高齢者も少なくないのが実情です。
これらの課題を解決する手段として、公的な住み替え支援制度が整備されてきました。
次は代表的な制度を1つずつ見ていきましょう。
主な高齢者向け住み替え支援制度
①移住・住み替え支援機構(JTI)の「マイホーム借上げ制度」
一般社団法人移住・住み替え支援機構(JTI)が運営する制度で、50歳以上の方が所有する住宅をJTIが借り上げ、転貸することで安定した賃料収入を得られる仕組みです。空き家になった持ち家を活用しつつ、その賃料収入を新しい住まいの生活費に充てられるため、資金面の不安を抱える高齢者の住み替えを支える代表的な制度です。借り手が退去しても賃料保証があるため、収入が安定するのも特徴です。
②高齢者住宅財団の「家賃債務保証制度」
一般財団法人高齢者住宅財団は、高齢者が賃貸住宅を借りる際に必要な家賃の債務保証を行う公的な支援制度を提供しています。これを利用すると大家さんは家賃未払いリスクを軽減できるため、高齢者の入居を受け入れやすくなります。連帯保証人を用意できない高齢者にとって、賃貸契約のハードルを下げてくれる心強い制度です。
③リバースモーゲージ・リースバックの活用
住み替え資金を確保する方法として、自治体や金融機関が提供する「リバースモーゲージ」も広く利用されています。持ち家を担保に融資を受け、亡くなった後に住宅を売却して返済する仕組みで、生存中は自宅に住み続けながら資金を得られるのが特徴です。
一方「リースバック」は自宅を売却して資金を得つつ、賃貸としてそのまま住み続けられる方法です。住み替え先が決まるまでの期間を確保したい場合や、先に資金を確保してから新居を探したい場合に活用されています。
④自治体独自の住み替え支援制度
多くの自治体では独自の高齢者向け住み替え支援制度を設けています。たとえば東京都の「東京ささエール住宅」や大阪府の「あんしん賃貸支援事業」など、名称や内容は地域によって異なりますが、共通して以下のような支援が行われています。
・高齢者の入居を拒まない登録住宅の紹介
・家賃補助や引っ越し費用の一部助成
・見守りサービスと連携した住み替え支援
・住宅相談窓口の設置
お住まいの自治体の窓口やホームページで、どのような住み替え支援制度が利用できるか確認してみることをオススメします。窓口に相談すると、対象となる登録住宅のリストや、家賃補助の条件、必要な申請書類などを詳しく案内してもらえるケースが多く、初めて住み替えを検討する方にとっても心強い相談先になります。
⑤サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への住み替え支援
「サービス付き高齢者向け住宅」への住み替えは、国土交通省や厚生労働省が連携して整備を進めており、バリアフリー化された住環境や見守りサービスが整っている点が魅力です。入居費用についても、自治体によっては補助制度が用意されている場合があるため、事前確認をオススメします。
支援制度はどう組み合わせる?ケース別の考え方
支援制度は1つだけを利用するのではなく、状況に応じて組み合わせることで、より安心して住み替えを進められます。
①「持ち家はあるが現金が少ない」場合
マイホーム借上げ制度で持ち家を貸し出しながら賃料収入を得て、その資金で新居の家賃を支払う、という組み合わせが考えられます。
②「賃貸への入居審査が不安」な場合
家賃債務保証制度と、自治体の高齢者向け登録住宅を組み合わせることで、入居のハードルを大きく下げられます。
③「まとまった資金をすぐに用意したい」場合
リースバックで自宅を売却して資金を確保し、その後じっくり新居を探すという流れが選択肢になります。
ご自身の状況に近いケースを参考に、どの制度が使えそうか整理してみるとよいでしょう。
支援制度を利用する際の注意点
対象条件を必ず確認する 制度ごとに年齢や所得、住宅の状態などの条件が細かく設定されています。
マイホーム借上げ制度は50歳以上が対象、家賃債務保証制度は自治体や物件によって利用可否が異なるなど、事前確認が欠かせません。
◆申請には時間がかかることも
公的機関を通す制度は、申請から利用開始までに一定の時間を要する場合があります。住み替えのスケジュールには余裕を持たせましょう。
◆複数の制度を比較検討する
1つの制度だけで解決しようとせず、資金面はリバースモーゲージ、入居のしやすさは家賃債務保証制度、といったように複数の制度を組み合わせて活用するケースも多くあります。
◆家族とよく相談する
住み替えは本人だけでなく家族にとっても重要な決断です。早い段階から情報を共有し、納得のいく形で進めることが大切です。
住み替えを成功させるためのポイント
①将来の生活をイメージする
今だけでなく5年後、10年後の身体状況や生活スタイルの変化も見据えて住まいを選ぶこと。
②信頼できる相談先を持つ
不動産会社や自治体の窓口、ケアマネジャーなど、住み替えに関する知識を持つ専門家に相談することで、適切な制度や物件選びがスムーズになります。
③早めの情報収集
住み替えを検討し始めたら、できるだけ早い段階で支援制度について調べておくことで、選択肢を広く持つことができます。
よくある質問
Q.支援制度の相談はどこにすればいいですか?
A.まずはお住まいの市区町村の住宅担当窓口、地域の不動産会社、地域包括支援センターに相談するのがオススメです。制度によって窓口が異なるため、複数箇所に問い合わせて情報を集めるとよいでしょう。
Q.一人暮らしでも利用できますか?
A.はい、多くの支援制度は単身の高齢者を想定して設計されています。むしろ一人暮らしで賃貸契約に不安がある方こそ、家賃債務保証制度や自治体の登録住宅制度の活用価値が高いといえます。
Q.制度を使わずに住み替えることもできますか?
A.もちろん可能ですが、資金面や入居審査の面でハードルを感じる場合は支援制度を知っているだけで選択肢が大きく広がります。まずは情報収集から始めてみましょう。
まとめ
高齢者の住み替えには、賃貸契約の難しさや資金面の不安など、さまざまな課題が伴います。
しかし、移住・住み替え支援機構の「マイホーム借上げ制度」や高齢者住宅財団の「家賃債務保証制度」、リバースモーゲージ、そして各自治体独自の支援制度など、頼れる仕組みが整備されつつあります。
これらの支援制度を正しく理解し、上手に組み合わせて活用することで、高齢者の住み替えはより安心で、自分らしい暮らしの選択につながります。住み替えを検討されている方は、まずはお近くの相談窓口や不動産会社に相談し、ご自身に合った支援制度を探してみてはいかがでしょうか。
住み替えは、単に「住む場所を変える」ことではなく、これからの暮らしをより快適に、より安心なものにするための大切な一歩です。
支援制度は決して敷居の高いものではなく、正しい情報にアクセスできれば誰でも活用できる仕組みです。「まだ早いかもしれない」と感じている方も、将来の選択肢を広げるという意味で、早めに情報を集めておくことに大きな価値があります。
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