高齢になってから賃貸住宅を探した経験がある方、ご家族の住まい探しを手伝った方なら、一度は「身元引受人」を求められた経験があるのではないでしょうか?

高齢者が賃貸物件を借りようとすると、多くの場合は連帯保証人とは別に「身元引受人」を立てるよう求められます。

なぜこのような仕組みが必要なのか、その背景を詳しく見ていきましょう。

身元引受人・連帯保証人の違い

まず整理しておきたいのが「連帯保証人」と「身元引受人」の役割の違いです。

<連帯保証人>
主に家賃の滞納など金銭的な債務を保証する役割を担います。

<身元引受人>
金銭保証だけでなく、入居者本人に何かあった際の対応全般を引き受けるなど、生活全般に関わる対応を求められます。
・緊急時の連絡先
・入居者が入院や施設入所となった際の手続き
・死亡時における遺品整理や退去手続きなど

高齢者(シニア)向けの賃貸住宅では、この身元引受人の存在が入居審査を通過するための重要な条件になっていることが少なくありません。

なぜ高齢者に身元引受人が求められるのか?

①孤独死・緊急時対応へのリスク管理
大家さんや管理会社が最も懸念するのが、入居者が一人で亡くなってしまう「孤独死」のリスクです。
特に単身高齢者の場合、体調の急変や事故が起きても発見が遅れる可能性があります。発見が遅れれば遅れるほど、原状回復にかかる費用は増大し、また心理的瑕疵物件として次の入居者が見つかりにくくなるという問題も生じます。
身元引受人がいれば、定期的な安否確認の連絡先として機能したり、万が一の際にすぐに駆けつけて対応してもらえたりするため、大家さん側のリスクを大幅に軽減できます。

②家賃滞納リスクへの備え
高齢者は年金収入が主な生活の糧となるケースが多く、若い世代に比べて収入が固定的で増える見込みが少ないという特徴があります。
また認知機能の低下により、家賃の支払いを忘れてしまうといったケースも起こり得ます。こうした事態が発生した際に身元引受人が本人に代わって状況を確認し、対応してくれることを大家さんは期待しています。

③認知症など判断能力の低下への対応
加齢に伴い、認知症などによって本人の判断能力が低下するリスクも避けて通れません。契約時は問題がなくても、数年後に本人だけでは適切な判断ができなくなる可能性があります。
そうした場合、身元引受人が本人に代わって施設への入居手続きや必要であれば成年後見制度の利用手続きなどを進める役割を担うことになります。

④退去時・死亡時の実務的な対応
入居者が亡くなった場合、部屋の中の家財や遺品を整理し、退去手続きを行う必要があります。
しかし身寄りのない高齢者の場合、これを誰が行うのかという問題が生じます。身元引受人がいれば、こうした実務的な手続きをスムーズに進めることができ、大家さんとしても安心して部屋を貸し出すことができるのです。

大家さん・管理会社側の事情

賃貸経営は事業である以上、大家さんにとってはリスク管理が経営の根幹に関わる重要な要素です。
高齢者の入居を敬遠する大家さんが一定数存在する背景には、前述したようなリスクへの不安があります。
実際、「一人暮らしの高齢者の入居に難色を示す大家さんは少なくない」というのが実情です。

身元引受人を求めることは大家さんにとって「入居を受け入れるための条件」であると同時に、高齢者本人にとっても「住まいを確保するための手段」という側面があります。身元引受人を立てられることで、大家さん側の不安が軽減され、結果として入居審査に通りやすくなるという相互にメリットのある仕組みとも言えるでしょう。

身元引受人がいない場合はどうすればよいか?

とはいえ……高齢になるほど身元引受人を頼める家族や親族がいないというケースも増えています。

・子どもが遠方に住んでいる
・そもそも身寄りがない
・家族に頼ることをためらう事情がある

上記の理由以外にもあり、状況は人それぞれです。
このような場合には以下のような選択肢が考えられます。

①保証会社の利用
連帯保証人の代わりに家賃保証会社を利用できる物件が増えています。ただし保証会社はあくまで金銭的な保証が中心であり、身元引受人が担う緊急時対応や死後事務までカバーしているとは限らないため、契約内容の確認が欠かせません。

②身元保証サービスの活用
近年は身元引受人の役割を代行する民間の身元保証サービスも登場しています。緊急時の駆けつけ、入院時の手続き、死後の事務手続きなどを一括して請け負うサービスで、身寄りのない高齢者にとって心強い選択肢となっています。

③高齢者向け賃貸住宅・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の活用
そもそも高齢者の入居を前提として設計された住宅であれば、身元引受人の要件が緩和されていたり、代替の仕組みが用意されていたりすることがあります。地域の居住支援協議会や自治体の相談窓口に相談することで、こうした住宅の情報を得られる場合もあります。

④成年後見制度・地域包括支援センターの活用
判断能力の低下が心配な場合は成年後見制度の利用を検討することも一つの方法です。また地域包括支援センターでは、高齢者の住まい探しに関する相談にも応じてもらえることが多く、まずは相談してみる価値があります。

まとめ

高齢者向け賃貸住宅で身元引受人が求められる背景には孤独死、緊急時対応、家賃滞納、認知機能の低下、退去・死亡時の実務対応など、大家さんが抱える多岐にわたるリスクへの懸念があります。これは決して高齢者を排除するための仕組みではなく、大家さんと入居者の双方が安心して賃貸契約を結ぶための仕組みとして機能している側面が大きいと言えます。

もし身元引受人を頼める人がいないという場合でも、保証会社や身元保証サービス、高齢者向け住宅、地域の相談窓口など、活用できる選択肢は複数存在します。
一人で抱え込まず、早めに情報収集をして、複数の選択肢を比較検討することが安心できる住まい探しへの第一歩となるでしょう。


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