「親から相続した実家を売りたい」
「老後資金のために自宅を売却したい」
高齢になってから不動産を売却するケースは年々増えています。
しかし、いざ売却しようとすると気になるのが税金の問題です。不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、原則として所得税・住民税がかかります。
ただし、高齢者やそのご家族が不動産を売却する際に使える控除・軽減税率の特例がいくつか用意されています。
そこで代表的な3つの制度、「3,000万円特別控除」「所有期間10年超の軽減税率」「相続した空き家の3,000万円特別控除」について解説します。

不動産売却でかかる税金の基本
不動産を売却して利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して譲渡所得税(所得税・住民税)が課税されます。
譲渡所得は次の式で計算されます。
譲渡所得=売却価格ー(取得費+譲渡費用)
この譲渡所得に対して税率がかかりますが、税率は不動産の所有期間によって異なります。
・短期譲渡所得(所有期間5年以下)
税率 約39%(所得税30%+住民税9%、復興特別所得税を含めると約39.63%)
・長期譲渡所得(所有期間5年超)
税率 約20%(所得税15%+住民税5%、復興特別所得税を含めると約20.315%)
高齢者の場合、長年住み続けてきた自宅や、親から相続した不動産を売却するケースが多く、所有期間が長期になっていることがほとんどです。
そのため、以下で紹介する特例の対象になりやすいという特徴があります。
特例①マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
自分が住んでいた自宅(マイホーム)を売却した場合、所有期間の長短にかかわらず、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれます。
(例)譲渡所得が2,500万円だったら?
この特例を使うことで課税対象がゼロになり、税金がかからなくなる可能性があります。高齢者が自宅を売却して介護施設や子どもの近くへ住み替える際には、非常に大きな節税効果が期待できる制度です。
<主な適用要件>
・自分が実際に住んでいた家屋であること(別荘や投資用物件は対象外)
・売却した年の前年、前々年にこの特例やほかの譲渡系特例を受けていないこと
・売り手と買い手が親子や夫婦など特別な関係でないこと
・住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
なお、老人ホームなどに入所して自宅を離れていた場合でも、一定の要件を満たせば「居住していたもの」として扱われる救済措置があります。長期入院や施設入所で空き家になっていた実家を売却する高齢者やご家族にとっては心強いポイントです。
特例②所有期間10年超のマイホームを売ったときの軽減税率
3,000万円特別控除と併用できるのが「所有期間10年超のマイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。長期譲渡所得の税率(約20.315%)よりもさらに低い税率が適用されます。
<軽減税率の内容>
・課税長期譲渡所得金額6,000万円以下の部分
→税率 約14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税)
・課税長期譲渡所得金額6,000万円を超える部分
→税率 約20.315%(通常の長期譲渡所得と同じ)
つまり、譲渡所得のうち6,000万円までの部分は通常より低い税率で計算されるため、長年住み続けた自宅を売却する高齢者ほど恩恵が大きい制度といえます。3,000万円特別控除を差し引いたあとの譲渡所得に対して軽減税率が適用されるため、両者を併用することで税負担をかなり抑えられます。
<適用要件のポイント>
・売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
・マイホームであること(3,000万円特別控除と同様の居住要件)
・前年、前々年にこの特例を受けていないこと
「何十年も前に購入、新築した実家を高齢になって手放す」というケースはまさにこの特例の典型例です。所有期間を確認するだけで数十万円〜数百万円の節税につながることもあるため、必ずチェックしておきたいポイントです。
特例③相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除
親が亡くなり、相続した実家が空き家になってしまうケースは非常に多く、社会問題化しています。これに対応する形で設けられているのが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」で、一般に「空き家の3,000万円控除」と呼ばれます。
これは高齢者本人というより、高齢の親から不動産を相続した子世代が使う特例ですが、「高齢の親が亡くなった後の実家をどうするか?」という際は必ず押さえておきたい制度です。
<主な適用要件>
・昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋であること
・相続開始の直前まで被相続人(亡くなった親など)が一人で住んでいたこと(同居人がいないこと)
・相続開始から売却まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと(ずっと空き家のままであること)
・売却代金が1億円以下であること
・相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・家屋を耐震改修するか、取り壊して更地にしてから売却すること(2024年以降は、売却後に買主が取り壊し、耐震改修を行う場合も対象に)
<注意点>
①2024年1月1日以降の売却分からは、相続人が3人以上いる場合、控除額の上限が1人あたり2,000万円に変更されている
②この特例の適用期限は2027年12月31日までの売却分とされている
被相続人が老人ホームなどに入所していた場合でも、一定の要件(要介護認定を受けていた、施設入所後に他の用途に使われていない等)を満たせば特例の対象となる点も、高齢化社会に対応した重要な改正ポイントです。
3つの特例は併用できるの?
・「3,000万円特別控除」と「所有期間10年超の軽減税率」は併用可能です!
・「マイホームの3,000万円特別控除」と「相続空き家の3,000万円特別控除」は、対象となる不動産が異なる(自分が住んでいた家か、被相続人が住んでいた家か)ため、通常は同一の売却で重複適用されることはありません!
・どの特例も確定申告をしなければ適用されません!自動的に税金が安くなるわけではないので、売却した翌年に必ず確定申告を行う必要があります!
まとめ
①マイホームの3,000万円特別控除
②所有期間10年超の軽減税率
③相続した空き家の3,000万円特別控除
高齢者が不動産を売却する際には上記の3つの特例をうまく活用することで、税負担を大きく抑えられる可能性があります。一方で、それぞれ適用要件が細かく定められており、必要書類(被相続人居住用家屋等確認書など)の取得に時間がかかる場合もあります。
「実家をどうするか?」
「老後資金のために自宅を売るべきか?」
このような判断は、税金だけでなく相続や今後の生活設計にも関わる重要なテーマです。売却を検討し始めた時点で、税理士や不動産の専門家に早めに相談することをオススメします。
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